手のひらほどの小さな箱に詰められた「ワタシ」
気の遠くなるような長い歳月を経て
いつしか こう呼ばれるようになった
───「スト・ナ・クヱタ」
懐かしいのに 何処か記憶と違う旋律<メロディー>
本当の名前すら忘れられた「ワタシ」は何なのか?
さぁ 巡ろう
この鎖を解くためのカギを探しに
演じているのは「私」なのか? 「わたし」なのか?
それとも「ワタシ」なのか?
芝居小屋は今日も賑わうだろう
この世は 神様の箱庭遊び 人形遊び ニンゲンアソビ
生きた儘 心臓を捧げよ
箱には雁字搦めの鎖を
人か獣か 判らなくなった頃
声を奪い 呪いは呪いへ
そして 弄ばれた運命に身を委ね
貴方と同じ色の瞳をしたニンギョウは
鏡越しに鏡を写し 高さを揃えた声で嗤い
あの音を数える前に 壊れてしまった
ある時 太陽は言いました
「我はもう疲れてしまった
何もかも どうでも良くなってしまった
いや どうにかするべきなんだろうけれど
疲れてしまったんだよ」
これを聞いた人々は 太陽を元気付けようと
多くの若者が生贄に志願しました
ある時 太陽は言いました
「我はもう大丈夫になったよ
みんなありがとう
これからもよろしくね」
イタイノイタイノトンデケ
もう我慢しなくて良いんだよ
無理に忘れる必要もないだろう
それでも ずっと握り締めているのは辛いから
今はしまっておこう
大事なものを入れる箱へ
そして 鎖で封をしよう
愛される順番に恵まれなかった僕と
絵本を読んでほしかった僕が
いつか手放せる その時が来るまで
幼い君を 抱きしめてあげられる その日まで
旅に出よう
誰も僕の濁りを知らない
誰も僕の明日を嗤わない
そんな異国の土地へ
出逢う何もかもが ハジメマシテ
懐かしいのに 何処か記憶と違う旋律<メロディー>
どうしてか こんなにも怖くて
眩しすぎて 目を開けていられない
君は自由だね リカオン
僕の歌を聴いていくかい?
いちばん高い音をマネしてごらん
あの鐘の音に耳を澄ませて
また歩き出そう
私には 魔法の言葉がある
いつでも 励ましてくれる おまじない
いつでも 守ってくれた おまじない
あの叫びを 涙を 苦痛を
無かったことにはさせない
どんな道も「ワタシ」が選択し続けた
この歓びを 自由を 気まぐれを
4.603 × 10^9年前の産声が祝福してくれる
さあ 唱えて この旋律<メロディ>を
きっと思い出せるから
何回も 燃え尽きて 光を失ってしまって
それでも 「ワタシ」を呼んでいたんだね
もう忘れないよ
「スト・ナ・クヱタ」
手に入れたカギを繋ぎ合わせ
鎖を解く時が来たようだ
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本当の名前すら失われた「ワタシ」は 何なのか?
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